推しが卒業した日の話【ショートストーリー】
男「ああ、ついにこの日が来てしまった。」
今日は、推し(=アイドルグループの中で特に好きな推してる人のこと)の卒業コンサート。
思えばいろいろあったな。
秋葉原で初めてあったときは、フリーライブのチラシを自分たちで配ってたな。
あの時、ビビビビッと電気が走った俺のアンテナは今考えるとすごいな。
あの偶然の出会いから、3年経った。
15歳だった君も、もう18歳だね。
最初からあの子のソロ曲で、会場のボルテージは一気にマックス。
それからも全曲彼女をセンターに置いたフォーメーション。
これだけで涙が止まらない。
いつもMCでは目立ってけど、曲中はどちらかと言うと外側が多かった。
いつかはセンター曲が出るかと思ってたけど、出る前に卒業だね。
初のセンターフォーメーションが、卒コンだとは思わなかったよ。
青「これがラストソングです。最後まで盛り上がってねー!」
曲が終わる。
アンコールが鳴り響く。
メンバー全員がTシャツに着替えて登場する。
赤「今日で、青が卒業ということで、メンバー全員からメッセージがあります!」
リーダーの赤がそう言うと、それぞれ青に向かってメッセージを話していく。
黄「いつもロケバス隣だったね。楽しかったよ!」
緑「卒業しても実家に泊まりに行くよ!」
紫「青は卒業して違う道に行くけど、いつかまた一緒にステージに立とうね!」
桃「一緒にスウィーツ食べに行こうね〜!」
赤「これまでMCとか青に頼りっぱなしだったけど、これからは私がしっかりしなきゃいけないと思う。・・・でも、でも、やっぱりさびしいよーー!」
青と赤はデビュー以来ずっと、ライバルという関係が運営に作られていた。
そんな赤がさびしいというのは、込み上げてくるものがあった。
周りの目なんて関係なくなって、号泣しました。
周りを見るとみんな泣いていました。
正直な話、赤のファンと青のファンには確執があった。
そして、圧倒的にリーダーでセンターの赤の方が人気があった。
会場にいるのも、大半は赤のファンだと思う。
そんな赤のファンが泣いてると思うと、余計に泣けてきました。
ステージでは、メンバー全員が泣いている。
客席では、ファンが泣いている。
不思議と一体感が湧きました。
青「・・・ふふふふふ。なんか笑っちゃうね!
わたしって、こんなにみんなから愛されてたんだね!
正直辛いこともありましたが、嫌になって卒業するわけではございません。
わたしは、もう完全燃焼!燃え尽きたんです。
このグループはもっともっとすごくなると思います。
でも、わたしはその成長速度についていけませんでした。
そして、ネガティブではなく、ポジティブな意味でこのグループは、わたしが居なくても大丈夫と思ったんです。
最後に皆さんにお願いがあります。
わたしが卒業しても、このグループをどうかどうか見捨てないでください。
ワガママなお願いなのはわかっています。
わたしはこのグループが大好きだし、このグループに救われました。
これからは、わたしもファンの1人としてグループと関わっていきたいと思っています。
どうか一緒に、このグループを楽しんでもらえたらいいな!と思います。
次の曲で、本当に最後の曲になります。
最後まで盛り上がって、最高の卒業にしましょー!」
最後の曲は、泣きすぎて記憶がほとんどないです。
覚えているのはあの子がずっと笑っていて、ファン全員に目線を送っていたことです。
あの子とは、たぶん一生会えないでしょう。
でも、僕は本当に満足しています。
最後までアイドルでいてくれてありがとう。
あなたが僕の青春でした。
あなたとの思い出を胸に生きていきます。
本当にありがとう。